CLAY COMPLETE 第9章 / 全11章 読了 約4分 / 2,524字 著者:垣内 良太 SHARE

第9章 GTMエンジニアリングとClay

9-1 Clayは手段である:7工程の中でClayが担う範囲

本書はClayClay企業やパーソンについて外にある情報を集め、AIで判断し、文面を作り、MA・SFAに書き戻す、営業・マーケティング向けのデータ処理ツール。画面は表計算ソフトに似ており、1行が1社または1人、1列が1つの問いに対応する。米国のClay Labs社が提供する。用語集で見る →の名前を表題に掲げているが、Clayを入れれば売上が伸びる、という主張はしていない。Clayは、顧客を知り、理解し、提案できる状態をつくるための手段の1つである。どの手段を使うかより、何のために、どの順番で使うかが先にある。

当社は、BtoBの売上をつくる営みを7つの工程で捉えている。

  1. 顧客理解と把握:誰に売るか。ICPICPIdeal Customer Profile受注・継続の実績から定義される、理想顧客像。ターゲットアカウント選定の基準になる。用語集で見る →、ターゲットアカウントターゲットアカウントABMで狙いを定めた企業。選定した「その先」にいる誰に何をいつ届けるかを設計するのが購買グループの考え方。用語集で見る →マトリクス、購買グループ購買グループユニット企業内部にある検討の単位。所属と行動の同一性から認定する。BtoBの購買は一人では決まらないため、リードではなくこの単位で捉える。用語集で見る →、4役割を定める
  2. プロセス・目標設計:相手の買い方に合わせて、自社がどう動くかの流れと目標を決める
  3. ツール選定:その流れを支えるツールを選ぶ
  4. データ基盤:顧客情報をどこに、どう持つかを決め、整える
  5. コンテキストコンテキストその顧客が今どんな状況にあり、なぜそれを求めているのかを説明するための情報。業種や規模と違い一社ごと・一人ごとに異なり、シグナル・自社接点・購買グループを組み合わせて組み立てる。用語集で見る →:一社一社の状況を集め、Why You NowWhy You Now「なぜ貴社に(Why You)」「なぜ今(Why Now)」「なぜ私たちが(Why Us)」の3つの問いへの答え。データから導かれる接触の根拠であり、営業を動かすのはリードの数やスコアではなくこの理由である。用語集で見る →を組み立てる
  6. 施策実行計画:誰に、何を、いつ、どの経路で届けるかを計画する
  7. 運用・改善:結果を見て、定義と施策を直し続ける

この7工程すべてを検討することをGTM戦略GTM戦略事業を市場に届け収益につなげる営みを、顧客理解と把握・プロセスと目標設計・ツール選定・データ基盤・コンテキスト・施策実行計画・運用と改善の7つの工程で捉え、そのすべてを計画すること。用語集で見る →と呼び、GTMGTMGo-To-Market製品・サービスを市場に届けて収益化するまでの一連の設計。日本語圏では Google Tag Manager と略称が重なるため、文脈に注意が要る。用語集で見る →戦略をテクノロジーで標準化・自動化・精度向上させる手段をGTMエンジニアリングGTM EngineeringGo-To-Market EngineeringGTM戦略の7つの工程を、テクノロジーとAIで標準化し、自動化し、精度を上げ続けることで、完遂し、グロースさせる手段。多くの企業で欠けている、ターゲットと施策の間の工程を仕組みにする。用語集で見る →と呼んでいる。

Clayが直接担うのは、5のコンテキストである。Web上の公開情報からシグナルシグナル顧客企業に起きた変化を示す情報。経営方針・組織・キーパーソン・採用・投資と業績・事業・導入ツールと体制・外部環境の変化があり、多くは公開されている情報から得られる。用語集で見る →を取り、属性と組み合わせ、Because3要素に変換し、文面と申し送りに落とす。本書の第3章から第7章は、この工程をClayでどう組むかを説明してきた。

同時に、Clayは他の工程にも関わる。1の顧客理解では、ICPの条件に合う企業を探し、TAM・SAM・SOMを数える(5-1、5-2)。4のデータ基盤では、MAMAマーケティングオートメーションマーケティングの実行と管理のための業務アプリケーション。用語集で見る →・SFASFAセールスフォースオートメーション営業の実行と管理のための業務アプリケーション。用語集で見る →の欠けた情報を補い、名寄せ名寄せ同一の企業・人物を指す複数のレコードを特定し、統合する処理。用語集で見る →する(5-4)。6の施策実行では、1to1メールやお手紙の文面を生成する(5-10、5-11)。7の運用では、シグナルの種類ごとの効果を測る入力になる(7-5)。

逆に、Clayが担わない工程もある。2のプロセス・目標設計は、Clayの外で人が決める。誰がどのシグナルで動くか、面談化率をいくらにするかは、ツールが決めることではない。3のツール選定も同じで、Clayはその選択肢の1つに過ぎない。第5章のユースケースが「何をするか」から始まっているのは、この順番を守るためである。

GTMの7工程と、Clayが担う範囲
図9-1:7工程とClayが担う範囲

9-2 内製化までの道筋

Clayは、営業・マーケティングの実務者が自分で組めるツールである。第2章で述べたこの性質は、導入の進め方にも影響する。実務の担当者が最初のテーブルを組み、結果を見て直す形で進む。情報システム部門に要件を渡して数か月待つ必要がない。

ただし、最初から全部を自社で組むのは難しい。シグナルの定義、対応表対応表自社の商材にとって、どのシグナルが、どの課題を示し、何を提案できるかを定めた表。シグナル(事実)をWhy You Nowの3要素(課題・ニーズ、タイミング、提案できる要素)に置き換えるルールであり、業種や商材で答えが変わるため自社ごとに作る。Clayの判定と文面生成はこれに従って動かす。用語集で見る →、ClaygentClaygentクレイジェントClayの機能の一つで、利用者が書いたプロンプト(自然文の指示)に対して、Webサイトを読んで答えを返すAIエージェント。データベンダーには載っていない「この企業が今何に取り組んでいるか」を企業ごとに調べ、根拠となるURLも返す。用語集で見る →への問いの書き方、MA・SFAへの書き戻し項目の設計は、やってみて初めて分かることが多い。当社が支援に入る場合、次の順番で進めている。

最初の3か月:当社が組み、お客様が見る

対象企業を絞り、ユースケースを1つか2つに限定して、当社がClayのテーブルを組む。お客様の担当者は、Claygentの回答と文面を確認し、現場の言葉で直す。この期間で、自社の商材に有効なシグナルと、営業が使う文面の形が見えてくる。

次の3か月:お客様が組み、当社が見る

2つ目、3つ目のユースケースは、お客様の担当者が自分で列を組む。当社は、問いの書き方、実行条件、書き戻しの設計を横で確認し、誤りがあれば直す。この期間で、担当者はClayの構造を理解し、自分で試行できるようになる。

その後:お客様が運用し、当社は改善の相談に乗る

月次の数値を一緒に見て、シグナルの定義と対応表を見直す。新しいシグナルの種類を足す、別の事業部に展開する、データ基盤と組み合わせる、といった拡張を、必要なときに相談する。

内製化で最も難しいのは、「何をシグナルにするか」「どう提案につなげるか」の判断を、担当者が自分で更新し続けることである。Clayの操作は数週間で覚えられる。これは第4章の対応表を、自社の資産として持ち続けることにあたる。対応表が更新され続けている組織は、Clayの機能が変わっても、担当者が変わっても、仕組みが続く。

9-3 当社の支援範囲

当社は、ワンマーケティング株式会社として、BtoB企業のセールス・マーケティングを、設計から実装、運用まで支援している。Clayに関しては、次の範囲を担う。

設計

自社の課題から利用方針を決め(第5章の一覧)、取りに行くシグナルを定義し(第6章6-2)、対応表を作る。ICPとターゲットの定義が曖昧であれば、そこから一緒に決める。

実装

Clayのテーブルを組む。MA・SFA(Salesforce、HubSpot、Marketo)への書き戻し項目を設計し、連携を構築する。データ基盤(BigQuery等)との組み合わせが必要であれば、その設計と構築も行う。日本企業のデータ事情に合わせて、国内データベンダーデータベンダー企業・パーソンの属性情報(業種、規模、所在地、法人番号、役職、連絡先など)を持ち、提供する事業者。得意な地域・業種・企業規模がそれぞれ異なる。Clayは情報そのものを持たず、複数のベンダーから取り出して組み合わせる。用語集で見る →の情報とClayの補完を組み合わせる。

運用代行

シグナルの検知、文面の生成、送信前の確認、精度の検証、改善の提案を、お客様のマーケティング・営業企画部門の一員として行う。当社が行うのはマーケティングの実務までであり、営業の商談そのものを代行することはしない。営業に渡すところまでを仕組みにし、その先は営業が動く。

社内への移管

9-2の道筋で、お客様が自分で運用できる状態まで移す。移管の時期と範囲は、お客様の体制に合わせて決める。

当社がClayを扱っているのは、自社で使って効果を確かめたからである。当社の営業・マーケティングは、ClayとHubSpotで組んだシグナル起点の仕組み(5-13)で動いている。本書に書いた設計、実装、運用の内容は、自社で試して残ったものである。お客様に提案する前に自社で試し、よいと確かめたものだけを提案する。この姿勢は、Clayに限らず当社の支援全体に共通している。

設計だけ、実装だけ、運用だけ、という切り分けはしない。一気通貫でも、細部からでも、お客様がGTMをやり切るために必要な範囲を、その都度組む。数百社分のデータの手直しや、数百のフォームの複製が必要なら、それも当社の手で行う。

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Clayが直接担うのは7工程のうち「05 コンテキスト」であり、プロセス・目標設計とツール選定は、Clayの外で人が決めます。内製化で最も難しいのは、何をシグナルにし、どう提案につなげるかの判断を、担当者が更新し続けることです。終章では、本書が伝えたかった1つのことを述べます。本書全体を1冊で読み返したい方は、全51ページのPDF版をご利用ください。

WHITE PAPER PDF版

MAとSFAに足りないデータは、外から取りに行く。

営業が初めて会う時点で、相手はすでに比較の途中にいる——先に動くには「なぜ今、この会社に」という理由が要り、その根拠となる相手の課題とタイミングはMA・SFAの外にあります。本書は、人が1社1時間かけていた調査・判断・文面作成をClayで仕組みにし、MA・SFAに書き戻して営業が動ける形で渡すまでを示した、全51ページ・図版17点の実務書です。

  • 営業面談の前に候補が絞り込まれる購買の実態と、MA・SFAのデータだけではWhy You Nowが書けない理由(第1章)
  • Clayの4つの機能と、MA・SFA・データベンダー・RPA・AI SDRツールとの違い。ウォーターフォールと列の積み上げ、日本企業データの事情(第2・3章)
  • シグナルの種類と、Because3要素に変換する対応表。「知る」から「提案できる」まで持っていく列の組み方(第4章)
  • TAM・SAM・SOMの推計から、シグナル検知、ハンズオフの肉付け、1to1メール、事業部アサインまで、13本のユースケースと自社事例(第5章)
  • MA・SFAへの書き戻しの設計、データクレジットとアクションの見積もり、人が確認する箇所、営業の動き方の変化と内製化までの道筋(第6〜9章)

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この本を書いた人

垣内 良太
垣内 良太
ワンマーケティング株式会社、代表取締役。BtoBマーケティングの戦略設計を専門とし、独自フレームワークと豊富な支援実績をもとに再現性ある売上づくりの"型"を提供する。これまで100社超のコンサルティングを実践してきた。登山・トレランが趣味。
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CLAY Complete Playbook

シグナルを、商談に変える。GTMの7つの工程にClayを組み込む、実装の設計図

MAとSFAに足りないデータは、 外から取りに行く。
CLAY Complete Playbook 表紙

MA・SFAの外にある情報を取りに行き、判断し、書き戻す。Clayの機能と構造、シグナルとコンテキスト、13本のユースケース、実装と運用までを体系化しました。(全51ページ・図版17点)