第9章 大規模組織のCRMのあるべき姿 ―― 一社・一人を、全社で見る
ここまで述べてきた考え方は、企業の規模を問わず成り立つ。だが、多事業部を持ち、グループ会社を抱える大規模組織には固有の難しさがある。同じ顧客に複数の窓口があり、それぞれが別々に動いている。本章では、大規模組織のCRMCRMCustomer Relationship Management顧客との関係と取引履歴を管理する仕組み。GTMの4レイヤーでは、SFA・MAと並ぶ業務アプリケーション層に位置づけられる。用語集で見る →が目指すべき姿を「一社・一人を、全社で見る」という一点から述べる。
9-1. 大規模組織では、同じ顧客に複数の窓口がある
事業部制の企業では、事業部ごとに製品があり、営業があり、マーケティングがある。本章では、産業機器事業部とソフトウェア事業部を持つ製造業を例に述べる。顧客企業から見れば、同じ会社の産業機器事業部とソフトウェア事業部が、別々の担当者を通じて別々に接触してくる。
第2章で述べた弊害は、ここで最も深刻に表れる。産業機器事業部の長年の顧客に、ソフトウェア事業部が新規開拓のメールを大量に送る。同じ部門に2つの事業部の営業が同じ週に訪問する。苦情を受けるのは、何も知らなかった産業機器事業部の営業である。
各事業部は自分の顧客を自分のSFASFAセールスフォースオートメーション営業の実行と管理のための業務アプリケーション。用語集で見る →で管理し、自分の目標に向かって動く。事業部単位では正しい行動が、全社で見ると重複と機会損失を生む。問題の本質は、顧客企業やその担当者が、産業機器事業部にとってもソフトウェア事業部にとっても同じ一人の相手であるにもかかわらず、社内ではそれが別々の顧客として扱われていることにある。相手は一人なのに、自社の側が一つになっていない。
9-2. 顧客の関心を、企業単位と個人単位の両方で見る
全社で顧客を見るとき、見るべきものは2つある。1つは、顧客企業が会社として何に関心を向けているか。もう1つは、その企業の中の一人ひとりが何に関心を向けているか。前者を企業単位の関心、後者を個人単位の関心と呼ぶ。
企業単位の関心とは「この企業は今、何に向かって動いているか」である。ある顧客企業(以下、同社)が中期経営計画で営業のデジタル化を掲げた(シグナルシグナル顧客企業に起きた変化を示す情報。経営方針・組織・キーパーソン・採用・投資と業績・事業・導入ツールと体制・外部環境の変化があり、多くは公開されている情報から得られる。用語集で見る →)。同社のネットワークから自社の製品ページが繰り返し閲覧された(Web行動の企業判定)。同社の3つの部門の人物が、別々の事業部のウェビナーに参加した(自社接点接点タッチポイント顧客と自社の間で起きる相互作用のすべて。マーケティング接点・営業接点・カスタマーサクセス接点・パートナー接点があり、商談も接点の一つである。用語集で見る →)。一つひとつは別の事業部が持つ情報でも、同社という単位でまとめて見ると、「複数の部門が営業のデジタル化に向けて動き始めている」という全体像が見える。
個人単位の関心とは「この人は、何に、どの程度、いつ関心を示したか」である。マーケティング部の佐藤氏は先週ウェビナーに参加し、翌日に事例資料を請求した。情報システム部の田中氏は3か月前に製品ページを一度見た。同じ会社でも関心の中身と強さと時期は違う。第5章で述べた購買グループ購買グループユニット企業内部にある検討の単位。所属と行動の同一性から認定する。BtoBの購買は一人では決まらないため、リードではなくこの単位で捉える。用語集で見る →の役割と検討段階は、この単位で持つ。佐藤氏は旗振り役旗振り役社内をどう説得するかを考え、検討を推進する人。着火役に材料を集めさせ、自身も調べ、上に上げていく。探しているのは「社内説得の材料」。用語集で見る →で要件整理の段階、田中氏は門番門番リスクはないか、要件を満たすかを審査する人。情報システム部門・法務・購買、あるいは現場の専門家として、比較情報やリスク情報を求める。用語集で見る →で情報収集の段階、という見え方になる。
企業単位の関心は「どの企業に働きかけるか」を、個人単位の関心は「その企業の誰に何を届けるか」を決める手がかりである。
大規模組織で重要なのは、関心の兆しが他事業部の接点に現れることが多いという事実である。産業機器事業部の顧客の担当者が、ソフトウェア事業部のウェビナーに参加する。産業機器事業部がこれを知らなければ、その企業の変化に気づく機会を失う。第3章で述べたSSOTSSOTSingle Source of Truth項目ごとに「どこが正か」が一意に定まった状態。全データを1箇所に集めることを意味しない。用語集で見る →は、大規模組織においてこそ価値を発揮する。
ただし、注意すべき点がある。SSOTによって顧客が一つになり、他事業部の接点や関心がすべての事業部から見えるようになる。それは大きな前進だが、同時に、これまで存在しなかった問題を生む。他事業部の顧客の関心が見える、ということは、他事業部がその顧客に動けてしまう、ということでもあるからである。具体的には、次の3つが起きる。
- コンフリクト:産業機器事業部が育ててきたリードに、関心を見たソフトウェア事業部が先に動いてしまう
- お見合い:互いに相手の事業部が動くと思い、誰も動かない
- 不適切なアプローチ:関係の深さを理由に産業機器事業部が対応し、ソフトウェア事業部の専門的な提案が届かない
3つに共通するのは、顧客の関心を全社で共有するだけでは足りない、ということである。どの関心に対して、どの事業部の誰が、どの順序で働きかけるのか。それを決めるルールと、そのルールをCRMの上で守らせる仕組みがなければ、共有された関心は、対立か放置か誤った対応のいずれかを生む。
9-3. 顧客の関心が、誰が動くかを決める
本書が提案するAI時代のCRMの考え方を、最も端的に示す。
誰が動くかは、顧客の関心が決める。
従来、誰がアプローチするかは組織の理屈で決まってきた。担当だから、管轄だから、長年の関係があるから。いずれも顧客の関心とは無関係である。だが、エンゲージメントエンゲージメント顧客が自社との接触に価値を感じ、関係を続けたいと思っている状態。接触の量ではなく関係の深さを表し、企業・購買グループ・パーソンの3つの単位で捉える。CRMの目的はこれを高めることにある。用語集で見る →は「欲しい時に、欲しい情報を、欲しい方法で、すみやかに」届けることで高まる。顧客がソフトウェア事業部の製品領域に関心を持っているとき、産業機器事業部が対応しても、欲しい情報は届かない。関心に合わない主体が動くことは、顧客にとって価値のない接触であり、エンゲージメントを損なう。
したがって、アプローチする権利は、顧客の関心に最も適した主体が得る。これが大規模組織におけるアサインの原則である。
横の判断:どの事業部が権利を得るか。 基準は関心の内容である。企業単位の関心から、それがどの製品領域に向いているかを読み取り、その領域に最も適した事業部が動く。取引の長さや地域の管轄は基準にならない。横の判断が定まれば、コンフリクトもお見合いも不適切なアプローチも防げる。
縦の判断:その事業部の中で、どの役割が動くか。 こちらも、決めるのは顧客である。顧客が、その関心に対する答えを、どのような手段で欲しているか。自分で読める資料が欲しいのか、誰かに質問して確かめたいのか、専門家から提案を受けたいのか、使い方を教わりたいのか。第1章で述べた「欲しい方法で」の判断である。その手がかりになるのが、購買グループの検討段階である。たとえば、課題に気づき始めた段階の顧客は自分で読める情報を求めることが多く、マーケティングがコンテンツを届ける。情報収集の段階では質問して確かめたいことが増え、インサイドセールスインサイドセールス訪問せずに電話やメールで見込み客と接点を持つ営業機能。聞き取りで得た情報は、フォームからは分からない購買グループの手がかりになる。用語集で見る →が会話のきっかけを作る。候補を比較する段階では具体的な提案を求め、営業が動く。導入後は使い方の支援を求め、カスタマーサクセスが動く。これは一つの目安であり、どの段階でどの役割が動くかは、商材や組織によって異なるため、自社のレベニューサイクルレベニューサイクルリード獲得から受注後の拡大・再購買までを、一つながりの循環プロセスとして捉える収益モデル。用語集で見る →に合わせて定める。考え方は単一事業部の場合と同じであり、第8章のユースケースが当てはまる。
横は「どの事業部か」を、顧客が何に関心を持っているかで決める。縦は「どの役割か」を、顧客がその関心への答えをどのような手段で欲しているかで決める。2つを分けて設計しなければ、アサインは混乱する。
既存の関係は、関心に合う事業部につなぐための資産として使う。 ソフトウェア事業部が権利を得ても、産業機器事業部との関係は消えない。産業機器事業部の営業が紹介し、同席し、社内事情を伝える。「自分の顧客だから他事業部は動くな」と考えるのをやめ、「自分の顧客だから、関心に合う事業部を連れて行く」と考える。この転換が、顧客から見て一つの会社として振る舞うことの実質である。
AIがアサインを支える。 関心と検討段階から最適な主体を導く判断は、人手では追いつかない。AIがコンテキストコンテキストその顧客が今どんな状況にあり、なぜそれを求めているのかを説明するための情報。業種や規模と違い一社ごと・一人ごとに異なり、シグナル・自社接点・購買グループを組み合わせて組み立てる。用語集で見る →から「同社の関心はソフトウェア事業部の領域、購買グループは情報収集の段階、ソフトウェア事業部のインサイドセールスが動き、産業機器事業部の担当営業に事前連携する」という候補を示し、人が確認して動く。
9-4. 一つのプラットフォームと、マーケティング組織の2つの役割
アサインの原則を実行するには、2つの前提が要る。
一つのプラットフォーム。 マーケティング、営業、インサイドセールス、カスタマーサクセスが、事業部を越えて一つのプラットフォームの上で動いていること。事業部ごとに別のSFAを使い、マーケティングだけが全社のMAMAマーケティングオートメーションマーケティングの実行と管理のための業務アプリケーション。用語集で見る →を使う構成では、横の判断に必要な企業単位の関心も、縦の判断に必要な検討段階も、一つの画面で見られない。SSOTとデータ構造が、全社共通のプラットフォームとして実装されていることが前提である。
マーケティング組織の2つの役割。 大規模組織のマーケティングは、担う仕事の異なる2つの役割で構成される。
- 全社を統括する役割(マーケティングオペレーション、MOpsMOps/SalesOpsマーケティングオペレーション/セールスオペレーションMOpsはマーケ部門内、SalesOpsは営業部門内の業務・ツール・データの最適化を担う機能。視野が自部門に閉じる点で、部門をまたいで一意なデータ構造の上に接続し直す RevOps とは役割が違う。用語集で見る →):MOpsとは、MAをはじめとするマーケティングのテクノロジースタック(ツール、データ、システム間の連携)と、その上で行われる業務プロセスを整備・運用し、マーケティング活動の基盤を支える機能である。大規模組織では、事業部を横断してこの基盤を担う。SSOTとデータ構造の維持、定義の統一、アサインのルールの運用、データ品質の監視、全社で使うMA・SFAの設定と管理。どの事業部にも属さず、9-6で述べるガバナンスを実装し運営する
- 現場で施策を実行する役割(フィールドマーケティングフィールドマーケティング事業部や地域に属し、市場と顧客に近いところで施策を実行するマーケティングの役割。全社のデータと定義を統括するMOpsと対になり、両者に上下の関係はない。用語集で見る →):事業部や地域に属し、市場と顧客に近いところで施策を実行する。市場の理解、ターゲット企業の選定、ウェビナーやコンテンツの企画、MAを使ったメール配信やナーチャリングナーチャリングまだ検討段階にない見込み客と接点を保ち、育てていく活動。用語集で見る →の運用。顧客の関心を最初に捉え、インサイドセールスや営業につなぐ
2つの役割に上下の関係はない。MOpsがなければデータと定義が事業部ごとにばらばらになり、横の判断が成り立たない。フィールドマーケティングがなければ、データの仕組みが整っていても、顧客に届く施策が生まれない。
9-5. クロスセル・アップセル:事業部と顧客のホワイトスペース
大規模組織のCRMが生む最大の成果は、クロスセルとアップセルである。既に関係のある顧客への追加提案は、新規獲得より成約率も投資効率も高い。それでも進まないのは、「どの顧客に、どの事業部の何が、まだ入っていないか」が見えていないからである。
これを見えるようにするのが、事業部と顧客のホワイトスペースホワイトスペース顧客と自社の組み合わせのうち、まだ取引や接点が無い空白の領域。一覧にして顧客の関心やシグナルを重ねると、クロスセル・アップセルなど次に働きかける機会が見える。用語集で見る →である。縦に主要顧客を、横に事業部を並べ、取引のない組み合わせを一覧にする。そこに、その顧客の関心とシグナルの情報を加える。
先ほどの顧客企業とは産業機器事業部の取引があるが、ソフトウェア事業部の取引はない。同社はソフトウェア事業部の製品領域に関わる新規事業を発表し、別の部門の人物がソフトウェア事業部のウェビナーに参加している。この組み合わせは、ホワイトスペースの中でも今まさに動く機会である。産業機器事業部の営業が関係を活かし、ソフトウェア事業部につなぐ。
活動の結果はCRMに戻り、次の関心を判断する手がかりになる。ソフトウェア事業部が提案して見送られた経緯は、半年後に産業機器事業部の領域で動き始めたときのコンテキストである。関心→活動→結果→次の関心の循環が事業部をまたいで続くと、一事業部に閉じていた情報が全社の資産になる。第4章で述べたカスタマーファネルファネルリード獲得から受注までを一方向の絞り込みとして捉える従来モデル。レベニューサイクルと対になる考え方。用語集で見る →の拡張は、大規模組織ではこのホワイトスペースを埋めていくこととして表れる。
9-6. ガバナンス:全社で一社を攻めるための約束
複数の事業部が同じ顧客に関わるには、ルールが要る。ルールがなければ連携は個人の善意に依存し、続かない。大規模組織のCRMには、次のガバナンスを持たせ、CRM上で可視化する。
- アカウントオーナーアカウントオーナーその顧客について、全社としての責任者。複数の事業部が同じ顧客に接する大規模組織で、他事業部はオーナーと連携して働きかける。接触ルール・権限などと並ぶガバナンスの一つ。用語集で見る →:その顧客について全社としての責任者を決める。他事業部はオーナーと連携して働きかける
- 接触ルール:誰が、いつ、どの接点で接触してよいかを定める。商談中の顧客への他事業部からのメール配信を止める、主要顧客への新規接触はオーナーの確認を経る。CRMの設定として実装し、反する接触は自動で止まるか警告される
- 権限:閲覧は広く、編集は限定する。全社で見ることと、全員が編集できることは違う
- 資源配分の基準:ターゲットアカウントターゲットアカウントABMで狙いを定めた企業。選定した「その先」にいる誰に何をいつ届けるかを設計するのが購買グループの考え方。用語集で見る →マトリクス9象限のような分類で顧客の優先度を全社で揃え、優先度の高い顧客に複数事業部が連携して厚く働きかける。事業部ごとに別の基準で決めていると、重要な顧客に資源が集まらない
- 品質と活動の可視化:顧客ごとに、データの充足率、事業部別の活動量、成果を一覧にする。オーナーと各事業部が同じ画面で全社の状態を把握する
ガバナンスは「縛るための仕組み」と受け取られがちである。だが、ここで述べたガバナンスは、全社で一社を攻めるための約束である。ルールがあるから他事業部の顧客に安心して働きかけられ、可視化されているから連携の判断ができる。ガバナンスは、クロスセルの前提条件である。
そして、このガバナンスを検討する際の基準は、顧客にとってよいかどうかである。アカウントオーナーを誰にするか、接触のルールをどう引くか、資源をどう配分するかは、事業部間の力関係や既存の慣行で決めるのではなく、「顧客から見て、どの体制で接してもらうのが最も価値があるか」から逆算して決める。顧客にとってよい組織のあり方を先に描き、それを実現するためのルールとしてガバナンスを定める。その順序を逆にすると、ガバナンスは社内調整の産物になり、顧客には何の価値も生まない。9-3で述べた「誰が動くかは顧客の関心が決める」という原則は、ガバナンスの設計にも貫かれる。
9-7. 合意形成:最も難しいのは技術ではない
大規模組織のCRMで最も難しいのは、合意形成である。事業部は自分の顧客情報を他事業部に見せることに抵抗を持つ。グループ会社の間では法人が異なるため共有に制約がある。グローバルでは国ごとに個人情報の扱いや商習慣が違う。
本書が示せるのは原則である。
- 顧客の側から目的を説明する:「顧客から見て一つの会社として振る舞うために共有する」を、事業部の利害より先に置く
- 段階的に進める:共通の主要顧客から始め、成果を示しながら広げる
- 見せる範囲と使う範囲を分ける:閲覧は広く認め、働きかけにはオーナーの関与を求める。「見られる」抵抗と「使われる」懸念を分けて解消する
- 共通にする部分と委ねる部分を分ける:企業の識別、購買グループの構造、接点の定義は共通に。接点の運用や個人情報の扱いは各国・各社に委ねる
合意形成は、営業でもマーケティングでも情報システムでもない横断の役割が担う。第10章で述べるGTMエンジニアリングGTM EngineeringGo-To-Market Engineeringマーケティング・営業・カスタマーサクセスに分断されたBtoBの収益プロセスを、データとテクノロジーで一本の再現可能な仕組みとして設計し直す取り組み。用語集で見る →の必要性は、大規模組織において最も切実である。
9-8. 事例:グローバルに多事業を展開する大手製造業
課題。 複数の事業部がそれぞれに顧客を持ち、顧客情報も事業部ごとのシステムに分かれていた。同じ顧客企業に複数の事業部が別々に接触し、顧客からは「同じ会社なのに話が通っていない」という声が上がっていた。ある事業部が把握している顧客の動きが他の事業部に伝わらず、提案の機会が見過ごされていた。
取り組み。 顧客企業を全社で一意に識別する基盤を整え、事業部ごとに分かれていた顧客情報を一つの顧客のもとに集める構造に改めた。事業部横断で顧客を見る運用と接触のルールを定め、主要顧客から段階的に適用範囲を広げた。
変化。 他事業部の接点から、顧客企業の新しい検討の兆しを捉えられるようになった。事業部と顧客のホワイトスペースが可視化され、クロスセルの機会を組織として見つけられるようになった。重複した接触への苦情は減り、全社として一つの窓口で対応できる体制に近づいた。
この企業の取り組みが示しているのは、大規模組織のCRMとは、一人の相手に対して自社が一つになる営みだということである。次章では、ここまで述べてきたすべてを、誰がつくり、動かすのかを述べる。
本章の要点
- 大規模組織では同じ顧客に複数の窓口があり、事業部単位の最適化が全社の重複と機会損失を生む。出発点は、相手は一人なのに自社の側が一つになっていない、という認識
- 顧客の関心は、企業単位と個人単位の両方で見る。関心の兆しは他事業部の接点に現れることが多い。ただし関心を共有するだけでは、コンフリクト・お見合い・不適切なアプローチが生じる。誰がどの順序で働きかけるかのルールと、それを守らせる仕組みが要る
- 誰が動くかは顧客の関心が決める。横の判断(どの事業部か)は顧客が何に関心を持つかで、縦の判断(どの役割か)は顧客がその答えをどのような手段で欲しているかで決める。既存の関係は、関心に合う事業部を連れて行くための資産
- 前提は一つのプラットフォームと、マーケティング組織の2つの役割(全社を統括するMOpsと、現場で施策を実行するフィールドマーケティング)
- 最大の成果はクロスセル・アップセル。事業部と顧客のホワイトスペースに関心とシグナルを組み合わせ、今動く機会を見つける
- ガバナンス(アカウントオーナー、接触ルール、権限、資源配分、可視化)は、全社で一社に向き合うための約束。顧客にとってよい組織のあり方から逆算して定める
- 最も難しいのは合意形成。顧客の側から目的を説明し、段階的に進め、見せる範囲と使う範囲を分ける

