ABMとは何か―効く企業の条件と購買グループという単位
はじめに
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、狙うべき企業を絞り込み、その1社を1つの市場として扱うBtoBマーケティング戦略である。ただし「絞る」を企業単位で終えると、ABMは動かない。必要なのは、企業を絞り、その中の事業部・部門・拠点を絞り、さらにその中の役割を絞るという3段階の絞り込みだ。
「ターゲット企業のリストは作りました。それで、次は誰に当てればいいのでしょうか」
ABMに着手した企業から、この質問をよく受ける。リストの精度が低いわけではない。業種も売上規模も申し分ない企業が並んでいる。それでも、そこで手が止まる。
理由は単純だ。1社という単位が、実行するには大きすぎる。
従業員3,000名を超える企業なら、事業部はいくつもあり、拠点は全国に散らばる。その中の誰に、何を伝えるのか。リストにはそれが書かれていない。
本記事では、ABMの基本から、自社にABMが向いているかを判断する条件、そして「1社」より深く絞るための単位までを順に整理する。
1. ABMとは何か——2003年に生まれた「絞る」戦略
ABMとは、1社を1つの市場として扱う戦略である
ABMとは、自社が獲得すべき重要企業を1社ずつ独立した市場とみなし、マーケティングと営業が資源を集中させるBtoB戦略である。英語ではAccount Based Marketingと表記する。
この言葉は2003年、ITSMA(Information Technology Services Marketing Association)が生み出した。ITSMA自身が「2003年にAccount-Based Marketingという言葉を作った」と公式リリースで述べている。
つまりABMは、20年以上の実務の蓄積を持つ手法である。近年のAIブームで生まれた新語ではない。
なぜ「広く集めない」ことを選ぶのか
ABMの本質は、獲得数を追わないことにある。
一般的なデマンドジェネレーションは、幅広く見込み客を集め、その中から有望なものを選んでいく。母数を増やせば、確率的に商談も増えるという設計だ。
ABMはこれを逆から組み立てる。最初に「この企業から受注する」と決め、そこへ資源を集中させる。母数は増えない。増やさないことを選んでいる。
だからABMは、やれば効く施策ではない。条件が合う企業にだけ効く施策である。この見極めを飛ばすと、投資は回収できない。
1:1、1:Few、1:Many——濃度で3つに分ける
ABMは投下する資源の濃度によって3つの型に分けられる。1:1・1:Few・1:Manyの3つは、ITSMAとDemandbaseの共同リリース(2017年)でも「ABMの確立された3つの進め方」として挙げられている。
| 型 | 対象 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 1:1 | 個社ごとに個別設計する | 取引規模が大きく、検討が長く複雑な最重要顧客 |
| 1:Few | 共通の課題を持つ少数の企業群 | 同業種・同じ組織課題・似た技術環境でくくれる場合 |
| 1:Many | 数十〜数百社へプログラマティックに配信 | 裾野を保ちながら兆しを検知したい層 |
ここで気づいておきたいことがある。3つの型はいずれも「対象企業を何社にするか」の話だという点だ。1社の中をどう扱うかについては、何も定めていない。この空白が、後半で扱う問題につながる。
2. ABMが効くのはどんな会社か——買い手ではなく「売り手」の条件で決まる
ABM適合は、狙う相手ではなく自社の構造が決める
「どんな企業を狙うべきか」を論じたABMの解説は多い。業種、売上規模、従業員数といった買い手の属性で対象を選ぶという話だ。
だが実務で先に問うべきなのは、自社がABMをやるべき構造になっているか、である。ここが合っていなければ、どれだけ精緻にターゲットを選んでも回収できない。
判断軸は3つある。
条件1:1社あたりの接点候補が多いか
1件の購買に関わる人数が多いほど、ABMは効く。
この「1つの購買判断に関わる、同じ企業内の複数の担当者の集まり」を購買グループと呼ぶ。海外ではbuying groupと表記され、Forresterをはじめとする調査機関が測定の単位として使っている。
Demandbaseの『State of ABM 2026』によれば、典型的な購買グループは13〜17名にのぼる。同レポートは1,452件のテナント(Demandbaseの利用インスタンス)、広告キャンペーン429,634件、マーケティング活動3,800万件、営業接点970万件を分析したものだ。
Forresterの『The State of Business Buying, 2026』は、さらに広い範囲を示す。1件の購買判断には、平均で社内13名の関係者と、社外9名が影響を与えている。社外には同じ立場の他社担当者、製品の専門家、業界アナリストなどが含まれる。平均値どうしを足せば、社内外あわせて20名を超える人数が1つの判断に関わることになる。世界の法人購買担当者およそ18,000名を対象にした調査(Buyers' Journey Survey・2025年実施)の結果だ。
ただし、この十数名という規模を日本の平均像として持ち込むと判断を誤る。
当社の『2025年度版 BtoB購買プロセス白書』(2025年9〜10月実施・n=600)で、購買に関係する業務に関わった人数を、単発購入の最高額別に見るとこうなる。
| 単発購入の最高額 | 関与人数の中央値 | 平均 | n |
|---|---|---|---|
| 300万円未満 | 3名 | 5.6名 | 387 |
| 300万〜1,000万円未満 | 5名 | 14.4名 | 93 |
| 1,000万円以上 | 5名 | 18.3名 | 120 |
平均と中央値がここまで離れるのは、一部の超大型案件が平均を押し上げているためだ。最大値は500名に達する。典型的な1件は、1,000万円以上の案件でも5名前後で決まっている。
つまり「BtoBの購買には十数名が関わる」は、全社の平均像ではない。価格帯が上がるほど関与人数の裾野が伸び、十数名から数十名の案件がその帯に集中する、という分布の話である。
だから条件1が問うているのは、平均が何名かではない。自社の商談が、その裾野の側にあるかどうかだ。
関与者が1〜2名で完結する取引なら、1社に資源を集中する意味は薄い。逆に十数名が関わる帯にいるなら、1人にアプローチして届く範囲は全体の1割にも満たない。
条件2:売る事業が複数あり、LTVが伸びるか
これが最も重要な分岐になる。
ABMは1社あたりの投下コストがリードジェネレーション型より高い。単発の受注額だけで判断すると、ほぼ確実に合わない。
見るべきは取引の継続性と拡張性である。1社に対して複数の事業やサービスを売れるか。最初の受注を起点に、アップセル・クロスセルが積み上がるか。つまりLTV(顧客生涯価値)で回収できるかどうかだ。
Momentum ITSMAとABM Leadership Allianceが2022年に世界のABM責任者・実務者279名へ行った調査『Elevating ABM 2022 Benchmark Study』では、72%が「ABMは他のマーケティング施策よりROIが高い」と回答している。この効果が出るのは、1社を深く長く掘れる構造を持つ企業である。
逆に言えば、売る商材が1つで追加提案の余地がなく、取引が一度きりで終わる事業では、ABMは割に合わない。
条件3:営業リソースが枯渇し、深掘りできていないか
三つめは、自社の営業体制の限界である。
ABMは資源を集中させる施策だ。裏を返せば、資源が足りない企業ほど、集中先を決める必要に迫られる。
対象企業は決まっているのに、担当者が手一杯で1社を掘り下げられない。窓口の1人としか話せていない。他部署に何人の関係者がいるのかも分からない。この状態は、ABMを検討すべきサインである。
ここで陥りやすい判断がある。「人が足りないからABMは無理だ」という結論だ。実際は逆で、人が足りないからこそ、投下先を絞る設計が要る。
3つの条件は、揃うほど効く
この3つは独立していない。揃うほど効果が跳ね上がる関係にある。
接点候補が多いということは、それだけ売り込める部署が多いということだ。売る事業が複数あるなら、その部署ごとに別の商材を提案できる。そして営業リソースが足りないからこそ、どの部署の誰から着手するかを決める必要が出てくる。
逆に、1つしか当てはまらない場合は、ABMを名乗る前にやるべきことがある。
取引が単発で終わるなら、まず商材の拡張を考えたほうがよい。関与者が1〜2名で決まるなら、通常のデマンドジェネレーションのほうが効率がよい。営業に十分な余力があるなら、絞らずに広く当てても成果は出る。
3つが揃うなら、ABMは投資に値する。ただし、ここからが本題だ。条件が揃う企業ほど、「1社」という単位では実行できなくなる。
3. なぜ「1社」では絞りきれないのか——絞り込みは3段階ある

第1段階:企業を絞る——多くはここで止まっている
ターゲット企業のリストができた時点を、ABMの実装完了と捉えてしまう組織は多い。
しかしリストは、対象の宣言であって実行計画ではない。「この100社を狙う」と決めたあと、明日どの担当者に何を送るのかは、リストのどこにも書かれていない。
止まる理由は、意志や熱量の問題ではない。多くの場合、器の側に原因がある。
SFAもMAも、既定では企業を1つのレコードとして扱う。1社に1行が割り当てられ、担当者はその下にぶら下がる。この既定のままでは、同じ企業の中に複数の購買グループが並立している状態を表現できない。購買グループを表す器をどこかに用意しない限り、1社=1行の見え方は変わらない。
リストが企業単位で止まるのは、器が企業単位だからだ。
Demandbaseは、エンタープライズを狙うときの相手をこう表現している。単一の意思決定単位ではなく、それぞれがP&Lと優先順位と購買プロセスを持つ、事業部の網である、と。
1社を1行で持つ限り、この網は見えないままだ。
第2段階:事業部・部門・拠点を絞る——同じ1社でも、当てる先は変わる
ここが実務で最も抜け落ちる段階である。そして、抜け落ちる形は売り手の事業構造によって2つに分かれる。
パターンA:複数の事業を売る場合——大手旅行会社
大手旅行会社を例にとる。BtoB向けに、周年事業の企画、販促プロモーション、社員旅行、インセンティブ施策、研修・教育サービスなど複数の事業を持っている。これらを同じ顧客企業へ売り込んでいく。
このとき、売る商材ごとに当てる部署がまったく変わる。
インセンティブ施策なら、話す相手は営業推進部門になる。一方、周年事業となると、経営企画や総務が主導し、そこに営業も加わったクロスファンクショナルなチームが立ち上がる。
同じ1社でも、商材が変われば購買グループの構成メンバーが総入れ替えになる。「A社を攻略する」という言い方では、この違いを表現できない。
パターンB:単一の事業を売る場合——大手部品製造業
では、売る商材が絞られていれば単純かというと、そうでもない。
大手部品製造業を例にとる。半導体部品のように、売る商材が絞られている場合だ。最終的なターゲットはエンジニアという1職種に見える。
だが顧客が大手製造業なら、エンジニアは全国の拠点に点在している。開発拠点、生産技術部門、各工場。さらにプロダクト単位でユニット化されていることも多い。
しかも購買を決めるのはエンジニアだけではない。購買部門が価格と供給の条件を見る。営業部門が最終製品側の要件を持ち込む。エンジニアの上長が採用の可否を判断する。
売る商材が1つでも、当てる先は拠点とユニットの数だけ分岐していく。
Demandbaseはグローバル製造業の例を挙げている。北米のオペレーション責任者、欧州の調達担当、アジアのIT責任者を、それぞれ動かす必要があるという。地域によって技術スタックすら異なるためだ。
2つのパターンに共通するもの
売り手が複数事業でも単一事業でも、結論は同じところに着く。企業という単位のままでは、実行に落ちない。

第3段階:役割を絞る——ユニットの中にも着火役と旗振り役がいる
事業部・部門・拠点までたどり着いても、まだ終わりではない。そのユニットの中に、さらに役割の違いがある。
ワンマーケティングでは、この役割をRRF(レベニュー・ロール・ファインダー)として4つに整理している。
| 役割 | 担うこと |
|---|---|
| 着火役(Signal Catcher) | 情報を集め、課題を見つける現場の担当者 |
| 旗振り役(Mission Driver) | 社内を動かし、予算を通す推進者 |
| 守門役(Deal Gatekeeper) | 承認と意思決定を担う |
| 予算保有者(Budget Holder) | 最終承認とROIの判断を行う |
注意したいのは、この役割が組織図と一致しないことだ。Demandbaseも、組織図はしばしば誤導すると指摘している。実際の意思決定には、技術アーキテクトや業務アナリスト、オペレーション責任者といった、明確な決定権を持たないまま提案を後押しも失速もさせられる「隠れた影響者」が入り込む。
役職名を見れば分かる、という前提は成り立たない。
アプローチ先が変われば、伝えるべきことも変わる
3段階で絞る理由は、突き詰めると1つに集約される。段階ごとに、伝えるべき内容が変わるからだ。
周年事業を検討する経営企画に、部材の単価は響かない。営業推進部門に全社のブランド戦略を語っても動かない。着火役に投資対効果の試算を渡しても持て余すし、予算保有者に製品仕様の詳細を送っても読まれない。
Demandbaseは、エンタープライズ向けのメッセージは2つのことを同時に果たす必要があると述べている。全社的な戦略課題に応えることと、個々の事業部が抱える固有の痛みに語りかけることだ。
3つの段階を整理すると、次のようになる。
| 段階 | 何を決めるか | 決まらないと起きること |
|---|---|---|
| 第1段階:企業 | どの会社を狙うか | 資源が分散し、どこにも刺さらない |
| 第2段階:事業部・部門・拠点 | 1社の中のどこに当てるか | リストはあるが、誰に当てるか決まらない |
| 第3段階:役割 | そのユニットの誰に何を伝えるか | 接触はできるが、話が噛み合わない |
絞るべき単位は、これで明らかになった。企業ではなく、事業部・部門・拠点で区切られた購買グループである。
問題はその次にある。この粒度を、誰が、どうやって維持し続けるのか。
4. 購買グループ単位に変えると、何が変わるか
勝率が最大2〜3倍に変わる
単位を変えることの効果は、数字にはっきり表れる。
Demandbaseの『State of ABM 2026』にデータがある。マーケティングと営業を購買グループ単位でそろえた組織は、いまも個々のリードを中心に実行している組織に対し、勝率が最大2〜3倍になる。3つから4つの購買グループを追跡している企業は、対象を広くとって構造化せずに進める企業より勝率が48.5%高い。
同じ企業を狙い、同じ商材を売っていても、単位の置き方だけで結果が変わるということだ。
なお、この節で引くDemandbaseの数値はいずれも同社プラットフォームの利用データに基づく。母集団はABMに投資している企業に偏っているため、水準そのものより差の向きを読むほうが安全である。
ただし、細かく分ければいいわけではない
ここで重要な但し書きがある。
同レポートは、1製品あたり2〜3の購買グループに絞ることが最適だとしている。それ以上に広げると、効果は逓減していく。
つまり購買グループ設計とは、際限なく分割する作業ではない。本記事が一貫して「絞る」と呼んできたものの延長線上にある。企業を絞り、事業部を絞り、そのうえで追う購買グループも絞る。深くはするが、広げはしない。
「大手製造業のすべての事業部に購買グループを立てる」という設計は、この時点で失敗が確定している。
接点の数が、そのまま結果を分ける
購買グループを単位に置くと、追いかける指標も変わる。何人に届いたか、である。
Demandbaseのデータは、この点に踏み込んでいる。180〜190回の接触を受けた購買グループのコンバージョン率は94%に達する。ただしこれは相関であり、接触を増やせば転換するという因果ではない。そこまで接触が積み上がる商談は、すでに前に進んでいる案件でもある。
数字の水準よりも、指標の置き換えが本質だ。「何件のリードを獲得したか」ではなく「1つの購買グループの何人に、何回届いたか」を見る設計に変わる。
成果を分けるのは、ツールの数ではなく接続
もう1つ、実装の方向を示すデータがある。
Demandbaseによれば、CRM・MAP・予測モデルの3系統を接続している組織は、MQA(マーケティングが有望と判断したアカウント)から案件化への転換率が22%を超える。連携が限定的な組織では14%にとどまる。
差を生んでいるのは、導入したツールの数ではない。データがつながっているかどうかである。持っている情報の量ではなく、使える状態にあるかが分かれ目になる。
ここまでの数字は明快だ。だが、これを読んで自社での実装に進んだ組織の多くが、次の段階でつまずく。設計はできる。続かないのだ。
5. 実装の勘所——難しいのは情報設計ではなく「運用が続くか」
「事業所単位で管理したい」は正しい。そして、そこで壊れる
支援の現場で最も多く聞く要望の1つが、事業所単位でデータを管理したい、というものだ。
この要望は正しい。拠点ごとに購買グループが分かれるなら、拠点単位で持ちたくなるのは当然の帰結である。
そして情報設計まではできる。項目を足し、階層を作り、拠点コードを振る。設計書は問題なく完成する。
壊れるのはその後だ。運用の観点で管理しきれなくなる。
誰が拠点コードを入力するのか。異動が出たとき、誰が更新するのか。名刺やフォームから入ってきた部署名が「営業推進部」「営業推進本部」「営業推進G」と揺れたとき、誰が寄せるのか。
そもそも、ある人物がどの事業部・部門・拠点に属し、購買でどの役割を担っているのか。これを正確に取得し続けること自体が難しい。
設計が間違っているのではない。設計は正しい。維持する側が続かないのだ。
標準オブジェクトでも作れる。だからこそ、盛りすぎる
Forresterは、購買グループを単位とする管理の枠組み(Demand Unit Waterfall)を、カスタムオブジェクトもカスタムコードも作らずにSalesforceの標準オブジェクトで構築できると述べている(2020年。商談担当者ロール=Opportunity Contact Roleが標準オブジェクトへ格上げされたことが根拠)。追加のツール投資が前提条件ではない、という意味で、この指摘は正しい。
ただしこの事実は、簡単だという意味ではない。同じ手順も、ロールやスコアのカスタム項目を足すことは前提にしている。標準オブジェクトで作れるということは、その上に情報を積み増していけるということでもある。
項目を足すのは簡単だ。足した項目を、5年10年と埋め続けるほうが難しい。
購買グループの粒度で管理しようとすると、必要な情報は確実に増える。所属する事業部。所属する拠点。担当プロダクト。購買における役割。そして、これらはすべて時間とともに変わっていく。
入力されない項目が増えると、データは「あるけれど信用できない」状態に落ちる。この状態のデータは、無いよりも悪い。判断を誤らせるからだ。
どこまで持ち、どこを捨て、どこをAIに任せるか
だから設計の勘所は、どこまで細かくできるかではない。どこまでなら維持できるか、である。
判断は3つに分けて考えるとよい。
持つものは、商談の判断が変わる情報に限る。事業部・部門・拠点は、当てる先そのものが変わるので持つ。役割も、伝える内容が変わるので持つ。それ以外の属性は、あれば便利という理由では追加しない。
捨てるものは、更新の担い手が決まっていない項目である。誰も更新しない項目は、時間の経過とともに嘘になる。作らないほうがましだ。
AIに任せるものが、残りを引き受ける。

たとえば部署名の表記ゆれは、人が目視で寄せている限り必ず溜まっていく。「営業推進部」「営業推進本部」「営業推進G」を同じ組織として束ねる処理は、データが入ってくる時点で機械側に寄せる。役割の推定も同じだ。役職名や行動履歴から候補を当てておき、人は確認と修正だけを担う。
6senseはPersona MapのCSV書き出しとして、購買グループのカバレッジをプラットフォームの外で共有・分析できる機能を提供している(2026年春のリリース)。誰が埋まっていて誰が空いているのかを、人が数えなくて済むようにする。
ここでのAIの役割は、新しいことを始めることではない。人手では維持できなくなる地点を、後ろへずらすことにある。
そのうえで、どこまで持ちどこを捨てるかという判断だけは、ツールの側からは出てこない。自社の営業プロセスと、実際に運用へ割ける人数から逆算するしかない。
購買グループ単位のABMが動くかどうかは、この一点で決まる。
まとめ:よくある質問
Q. ABMは自社に向いていますか。何で判断すればよいですか。 A. 買い手の属性ではなく、自社の構造で判断します。1社あたりの接点候補が多く、複数の事業を売れてLTVが伸び、営業リソースが足りていない。この3つが揃うほど適合します。接点候補の目安は、当社調査では単発購入1,000万円以上の帯で関与人数の裾野が伸びます(中央値5名・平均18.3名)。
Q. ターゲット企業のリストは作りました。次に何をすべきですか。 A. 1社の中を区切ります。ただし区切る軸は1つではありません。売る商材によって当てる部署が変わり、拠点やプロダクトのユニットでも分かれ、さらにそのユニットの中で着火役と意思決定者という役割に分かれます。ここまで下ろして初めて、誰に何を送るかが決まります。
Q. 購買グループは細かく作るほどよいのですか。 A. いいえ。1製品あたり2〜3に絞るのが最適で、それ以上に広げると効果は逓減します。深く絞る作業であって、細かく分割する作業ではありません。
Q. 専用のABMツールを導入する必要はありますか。 A. 必須ではありません。Forresterは、カスタムオブジェクトやカスタムコードを作らずSalesforceの標準オブジェクトで購買グループ単位の管理を構築できるとしています。差が出ているのはツールの数ではなく、CRM・MA・予測モデルが接続されているかどうかです。
Q. 管理項目を増やすと、運用が破綻しませんか。 A. します。だから「どこまで細かくできるか」ではなく「どこまでなら維持できるか」で設計します。更新の担い手が決まっていない項目は作らず、表記ゆれの正規化や鮮度の維持はAIへ寄せます。
Q. 組織図があれば購買グループは分かりますか。 A. 分かりません。実際の意思決定には、組織図に現れないプロジェクトや技術アーキテクト、業務アナリストが関与します。役職名からの推定には限界があります。
次の一手は、GTM Generatorを試す
ABMの効果を最大化するには、ターゲット企業の内部まで細かく絞り込む3段階の戦略が重要です。このリストアップや段階的な絞り込みはシンプルに聞こえても、実際の業務での体系化は容易ではありません。そこで役立つのが、会社情報の登録だけで自社向けのGo-To-Market(GTM)戦略のたたき台を自動生成するツールです。ICPや購買グループのペルソナ設計まで含んだ土台があれば、自社のABM活動を具体化する出発点になります。
FREE APP
GTM Generator
Go-To-Market戦略、ゼロから作らない選択肢を。
精緻なGTM戦略を描く道は、これまで2つ。社内で膨大な工数をかけるか、戦略ファームに高額なフィーを払うか——GTM Generatorは、その3つ目の選択肢です。会社情報を登録するだけで、御社向けの戦略仮説を組み上げます。あっという間に、しかも無料で。
- 本来コストのかかる戦略設計の初期工程が、0円。まず方向性を固めるのに、リスクはありません
- ヒアリングも事前準備も不要。入力は会社情報だけ。あとは待つだけ(完了をメールでお知らせ)
- 勝因分析・競合・PEST/SWOT・STP・ICP・ペルソナ・VPC・ポジショニング・購買心理変容(PPF)・初回提案案まで、14のレンズ。しかも膨大な公開情報の調査からスタート
- 100社超のBtoB企業を支援してきたワンマーケティングの戦略設計メソッドを反映。チューニングを重ね、最適な解決策を生成
- 出力はWordで。検討資料にも提案書にも、そのまま組み込めます







出典情報の詳細
※管理用。公開時の掲載可否は要確認。
- ワンマーケティング『2025年度版 BtoB購買プロセス白書』(インターネットリサーチ・2025年9月30日〜10月1日・n=600/Q8T1「購買に関係する業務に関わった人数」単発購入最高額別:低価格帯 n=387 中央値3・平均5.6/中価格帯 n=93 中央値5・平均14.4/高価格帯 n=120 中央値5・平均18.3/全体 中央値3・平均9.5・最大500) 社内一次データ
- ITSMA・Demandbase共同リリース(2017-09-06/「ITSMAは2003年にAccount-Based Marketingという言葉を作った」/1:1・1:Few・1:Manyを"three established approaches to ABM"として記載) リンク
- Momentum ITSMA / ABM Leadership Alliance『Elevating ABM 2022 Benchmark Study』(2022年・n=279/72%がROI優位と回答) リンク / 共同発行元による同一数値のリリース リンク
- Demandbase『State of ABM 2026: Pipeline Benchmarks』(1,452テナント/広告キャンペーン429,634件/マーケティング活動3,800万件/営業接点970万件) リンク
- Demandbase『Enterprise ABM Strategy』 リンク
- Forrester『The State of Business Buying, 2026』(Buyers' Journey Survey・2025年実施・n≒18,000/社内13名+社外9名) リンク
- Forrester『Set Up the Demand Unit Waterfall in Salesforce』(2020-02-13・Vicki Brown) リンク
- 6sense『Spring 2026 Product Update』(Persona Map CSV export) リンク

